意見陳述書

平成18年12月6日

東京地方裁判所刑事第2部 御中
 
被 告 人  植  草  一  秀
 
 私は、平成18年9月13日夜、ある宴席に出席し、その場での特別な事情もあり、お酒を大量に飲みました。その結果、しばらくして強烈な睡魔に襲われる酒酔いの状況に陥り、このことが私が今回の事件に巻き込まれる一因になりました。その結果として、これまで私を支援してきて下さった多くの皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまうことになり、この点については大変申し訳なく思っておりますと同時に、お酒を飲み過ぎたことを深く反省しております。

  強い睡魔に襲われる酒酔い状態にあったために、私が本来帰宅する方向とは逆方向に向かう電車に乗ってしまいました。電車に乗り込む際には、逆方向に向かう電車であることに気付いたのですが、反対ホームに行くのは面倒だと思い、そのまま電車に乗ってしまいました。

  それでもその後に、やはり降りようかと思った瞬間にドアが閉まり電車が発車してしまいました。

  自分が乗ってきたドアの方向に向かい眠ったような状態で立っていたところ、少しして少し大きめの声が聞こえたので目を開けましたら、私の前方の少し離れた所にいた女性が、その女性がそれまで立っていた位置を左回りに振り返りながら、私の右斜め前方、1〜1.5メートルほど離れた場所に移動しながら、「子供がいるのに」といったことを言うのを目撃しました。

 私は「痴漢騒ぎかもしれない」と感じて、「絶対に関わり合いになりたくない」と思い、少し右を向いて、元の姿勢のまま目をつぶって立っておりました。

 それから20〜30秒ほどした時に突然私は左側とうしろ側を誰かに強く掴まれました。自分が犯人に間違われたと思い、がく然としましたが、自分が人によく知られている身でしたので、ここで騒ぎにしたくないと思い、大きな声も出さずに駅に到着するのを待ちました。

  駅に着いたら、女性に事情を聞き、私が無関係であることを理解してもらわなければならないと思っていました。  駅について、当然その女性と話ができると思っておりましたが、おそらく二人だったと思うのですが、私を掴んだ人たちが強烈な力で私を押さえつけて、事務室の方向へ連れて行きました。途中で私は何度も「女性と話をさせてくれ」と言いましたが無視され、上半身が全く身動き出来ないような強烈な力で押さえられ、駅事務室の左側の小さな部屋に私一人だけが、連れてゆかれました。

 11月10日過ぎに受け取った検察官開示記録によると、私を掴んだ人達は事件を目撃していない二人の民間人の男性であったとのことですが、それならばなぜ、私が女性と話をしようとするのを力づくで阻止し、私一人だけを女性とは別の事務室に連れていったのか、非常に不自然であるとの思いを拭えません。

 事務室の入り口の所に体格の大きめな駅員がおりましたので、「とにかく女性と話をさせてくれ」と告げて事務室を出ようとしたところ、その駅員に制止されました。激しくもみ合った末に結局阻止され私は椅子に座りました。

 私は、「このままでは私が犯人にされてしまう。そうなればマス・メディアは無責任で一方的な情報を土石流のように氾濫させ、家族が想像を絶する報道被害に直面する。あげくの果てに有罪にされてしまうかもしれない。家族の報道被害を最小に食い止めて家族を守るには、いま私が命を絶ち、すべてを遮断するしかない。命を絶つとすればそのタイミングは今しかない」ととっさに判断し、駅員が外側を見ているすきに、ネクタイをはずして、そのネクタイで自分の首を絞めて自殺をはかりました。ところが、その途中で駅員が気付き、力づくで阻止されました。私は放心状態に陥りましたが、まもなく警察官が来て、事件については何も聞かれることなく、警察署に連れていかれました。事件について私は当初より一貫して無実を主張して現在に至っております。

 その後のマス・メディア報道においては、テレビ番組においても、タレントや弁護士の立場にある者までもが、未決収容者にある私をあたかも確定者であるかの如くに扱う発言を繰り返すことが放置され、また週刊誌なども私が過去に痴漢事件で何度も示談をしたことがあるなどの事実無根の情報を流布するなどの状況が放置されております。私が懸念した報道被害は現実に生じております。

 検察官は、「否認を続ければ、裁判で私生活を攻撃して家族を徹底的に苦しめてやる」と学校等でのいじめを意図的に誘発するとも受け取れる発言を繰り返し、また警察官は、「否認して裁判になれば必ずマスコミのえじきになる」、「否認すれば長期の勾留となり小菅に移送される」と繰り返し述べ、罪を認めることを迫り続けました。

 現実に現在私は長期間勾留され、また私が営んでおります事業の顧客データも押収されているため、私の経営している零細な事業にも重大な支障が生じております。

 それでも私は、自らの誇りと人間としての尊厳に鑑みて、事実に反して罪を認めることはできないと考え、無実の主張を貫いて現在に至っております。

 裁判所におかれましては、予断・偏見を持たれることなく、被告事件について、適正な手続に基づいて真相を究明し、関係法令の適正な運用に基づき正しい判決を下されますよう強くお願い申し上げます。

以 上
 
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