平成18年特(わ)第4205号
迷惑防止条例違反
裁判速記録
(午前の部)
日時・平成19年3月28日(木)
於・東京地方裁判所第429号法廷
 
 
裁判官: 神坂尚 、宮本聡、大村るい
検察官: 小出幹
 
 
  1. 神坂裁判長 若干早いですが、開廷してよろしいですかね。弁護人、よろしいですか。検察官、よろしいですか。  それでは、開廷して、手続を進めてまいります。  まず、ごらんのとおり裁判所の構成が前回とまた変わりましたというか、もとに戻ったという状況ですので、改めて手続を更新いたします。  いずれも意見をお伺いいたしますけれども、被告人は特にこの段階で申し述べることはないということでよろしいですね。
  2. 弁護人1 はい。
  3. 神坂裁判長 それでは、更新手続を終了いたします。  証人の尋問に先立ちまして、若干書証の整理等を行っておきますけれども、弁護人の方から、従前の証拠開示の申し立てというか、申し入れというのがちょっとあるのですけれども、2月28日付で2通でしたか、ありましたようですが、これについては、いずれも検察官の方で対応していただいておりますので、申し出自体を取り下げるという扱いでよろしいですか。
  4. 弁護人1 はい、結構です。
  5. 神坂裁判長 では、この2つの申し出は取り下げられました。  それから、さらに3月20日付の証拠開示申し立てが裁判所の方に出されておりますけれども、これについては検察官の方で対応を検討するということでよろしいんですか。
  6. 検察官1 はい、そうです。
  7. 神坂裁判長 いずれもご連絡では3月中にということでしたが。
  8. 検察官1 いずれにせよ3月中に対応を決めたいと考えております。
  9. 神坂裁判長 対応を決めると。それでは、証拠開示の関係ではそのように対応することといたします。新たな申し出に対する対応に対する検討ということです。  それから、書証の関係なんですけれども、弁護人の方から前回の請求がされていた書証と、それから今立証するのかどうかという証拠があるわけですけれども、請求そのものについてはどうされますか。
  10. 弁護人1 本日追加で請求をいたします。
  11. 神坂裁判長 1番から8番まで出ているようですが、従前、裁判所の方で弁護人の請求されている証拠について番号を振っておりまして、今までのところ、たしか8番までだったと思いますので、番号としては9番ということになると思いますので。
  12. 弁護人1 はい。
  13. 神坂裁判長 ここに書いてある1番の証拠を、弁の9番、以下10、11というふうに番号を振っていってくださいということでお願いします。  それで、従前、弁護人の方から請求されているものについての検察官の意見が保留されているものがあったかと思いますけれども、それについて一部検討中のものもまだあったかと思いますけれども、きょうの段階で、証拠についてのご意見を明らかにしていただけるものはあるでしょうか。
  14. 検察官1 3月20日付かと思いますが、弁護人が請求されましたDVDビデオ、3月11日に撮影されたとするもの、これについては、これの前半部分については、その立証趣旨を、被告人、弁護人の主張に基づく本件の再現状況ないし被告人の供述に基づく本件の再現状況などと限定するのであれば、特に取り調べに異議はないもの、もしくは同意いたします。  後半部分については、現時点では意見を留保させていただきたいと考えております。  それから、本日請求のありました、これは14番になるんですかね。  違いました。失礼しました。15番に当たるんだと思いますが、3月22日付の……。
  15. 神坂裁判長 はい、よろしいです。
  16. 検察官1 違いますかね。
  17. 神坂裁判長 いえ、合っています。要するに、もとの番号でいうと、7でよろしいわけですね。
  18. 検察官1 はい。7で書かれている証拠ですが、これにつきまして……。
  19. 神坂裁判長 一応裁判所の方に書面で出していただいていますが、同じ書面は弁護人の方にいっていますか。
  20. 弁護人1 いただいております。
  21. 神坂裁判長 対応についてということです。
  22. 検察官1 詳細はメモのとおりでありまして、本文部分、一部同意、それから前半部分の写真については同意いたします。
  23. 神坂裁判長 留保されている部分があるのですね。
  24. 検察官1 そうです。その点については意見を留保させていただきます。
  25. 神坂裁判長 その他については、いずれもまだ現時点では留保ということですね。
  26. 検察官1 はい。現在検討中でございます。
  27. 神坂裁判長 1番というか、事情聴取報告書というのが出ておりましたね。
  28. 検察官1 Kさんのでしょうか。
  29. 神坂裁判長 Kさんです。
  30. 検察官1 これについても留保しておりましたが、これにつきましては不同意ということにさせていただきます。
  31. 神坂裁判長 不同意ですね。1番が不同意になりましたけれども、弁護人の方、この時点でどうされますか。
  32. 弁護人1 Kさんは撤回でいいと思います。
  33. 神坂裁判長 撤回でよろしいわけですね。
  34. 弁護人1 はい。
  35. 神坂裁判長 書証としては撤回ということでよろしいですね。  それでは、意見はそういうことでいただいたということで、それを採用するということにいたします。  それでは、本日同意のありましたもの、要するに、DVDの前半部分について。これは立証趣旨の変更をするのであればということなんですけれども、弁護側としてはいかがですか。前半部分は立証趣旨を変更するということでよろしいですか。
  36. 弁護人1 そうじゃないと上映できないということであるので、いたし方なく、その辺は立証趣旨の変更に応じます。
  37. 神坂裁判長 それでよろしいですか。
  38. 弁護人1 はい。ただ、先に申し上げますと、このDVDビデオ1枚に同意部分と留保部分と両方入っておりますので、きのうの夕方のご意見をいただいたばかりだったので、分けて収録することが物理的に不可能でしたので、上映するとすれば、この前半部分を説明させていただいて、後でその部分だけのリストを出すという形にさせていただければと思います。
  39. 神坂裁判長 結構です。
  40. 弁護人1 それと、一応撮影報告書についても不同意部分、留保部分、除いた部分を隠したものを用意はしておるのですけれども、この点に関してこちらの方として若干意見がございますので。
  41. 弁護人2 とりあえず、じゃ隠した部分だけを。
  42. 弁護人1 まず。
  43. 弁護人2 その方がいいですね。
  44. 弁護人1 とりあえず、じゃ隠した部分の撮影報告書、それからこれはYさんの検面調書をお出しいたします。
  45. 神坂裁判長 ちょっと待ってください。まとめてDVDは取り調べというのは後の方になると思いますので、被告人質問に先立ってやる形になるかと思いますので、とりあえずはお手元に置いておいていただければと思います。そのときに提出してください。
  46. 弁護人2 ちょっと発言させていただいてよろしいですか。  撮影報告書のうち、検察官が不同意または留保した部分の関係なんですけれども、不同意または留保になっている部分の中に、例えばこういう人がこの位置に立っているとか、要するに、それを見ないと、ビデオだけ見ても、この人がどういう役割の人なのか、例えば被告人役なのか、真犯人役なのか、被害者役なのかわからないし、なぜこの人がそこに立っているのかもわからないし、その説明の部分がないと、DVDだけ見てもわからないということになるんですね。  その部分について検察官が不同意にされているので、もしそのままそれを維持されるということであれば、だれがどこの位置に立っていて、それはここのこういう役の人だとか、そういうようなことについて、弁護人の方で指示して決めているわけですけれども、そういったことについて、我々の方で立証しないといけないということになりまして、もしやるのであれば、弁護人の1人を証人尋問請求して、本日付で、もし可能であれば、ビデオの上映に先立って、もし採用していただければ、どういう配役でどうなっているかという基本的なビデオの撮影に至った説明を簡単にさせていただいた上で、その上でビデオを上映した方がいいのではないかと思っております。
  47. 神坂裁判長 本日検察官の同意、不同意の意見を明らかにされたところというのは、被告人の指示説明による記憶に基づく採用部分というふうになりますか。
  48. 弁護人2 はい。被告人の記憶に基づく部分というのは、被告人の立ち位置と被害者の立ち位置についてはそうですけれども、それ以外にも、このビデオでは何人ものいろいろな乗客役の方が立っているわけなんです。例えば逮捕者の方とか、そういったことについては供述調書とか、そういう方の、あるいは被害者の供述とか、いろんな方の記憶に基づいてやっているわけです。  つまり、被告人自身は自分と被害者以外の人が具体的にどこに立っていたかということを記憶しているわけではないので、それについては、基本的に争いがないものとして、関係者の供述に依拠して決めているわけですけれども、それを指示して決めたのは弁護人なんですね。  被告人はあくまでも自分と被害者の位置関係や移動については指示説明していますけれども、それ以外のものについては、弁護人が関係証拠に基づいて指示説明をして決めている。したがって、それをどうだったのかということについて事前に言わないと、ビデオだけ見ても、極端なことを言うと、一体このビデオの中で被告人役というのはだれなのかということもわからない状況なんです。真犯人役もだれなのかもわからない状況です。
  49. 神坂裁判長 でも、少なくとも被告人と被害者とされている方と、それから被告人が記憶に基づく真犯人とされている方というのは、それは被告人はわかるんですか。
  50. 弁護人2 それはビデオでだれがやっているかということを彼が証言できるかという趣旨ですね。
  51. 神坂裁判長 はい。
  52. 弁護人2 それはビデオの再現のときに彼も立ち会っていますから、本人にそれを被告人質問で話させることは可能です。
  53. 神坂裁判長 わかりますよね。
  54. 弁護人2 ただ、それ以外の人物とかいったことを含めて、全体については、弁護人の指示で証拠に基づいてやっています。例えばつり皮の位置なども特定しているんですけれども、それはもう被告人とは関係なく、我々の方で調査した結果に基づいて、例えばつり皮の位置を決めておりますし、電車の座席の位置とか、実際に客観的にどういう形状になっているか。それを被告人が記憶しているわけではないので、我々が集めた関係資料、京急からの照会とか、そういったものに基づいて位置関係をすべて確定しています。
  55. 神坂裁判長 本日弁護人からの証拠請求の対応についてと題する書類があると思いますけれども、その中で、ぜひその部分が必要であるとされる部分というのは具体的にどこになりますか。(1)から始まっていますね。どうなんでしょう。写真とかはどうですか。
  56. 検察官1 裁判長、済みません、例えばこの報告書の3ページの下から6行目から、例えば検討できるのは、2のアの位置に何々役のだれだれが立ちとかいうふうにありますよね。このあたりについて部分的に同意することは可能です。
  57. 弁護人2 もっと申し上げると、この再現実験及びビデオ撮影報告書その2の、要するに第2の部分をすべて不同意にされていらっしゃるわけですね。
  58. 検察官1 そうですね。
  59. 弁護人2 ただ、この第2のうち、算用数字の1から5までというのは、基本的にはこのビデオの状況説明になっておりまして、6に若干弁護人の意見も入っております。だから、6の部分は必ずしもビデオを上映するのに必要はないと思うのですけれども、1から5の部分については、むしろ同意していただければいいのではないかなと私は思っていたのですけれども。  要するに、配役とか、位置関係とか、そういったことが1から5については、あるいはカメラをどこに設定したとか、ビデオカメラはどこに、例えば位置関係でいうと、つり皮や座席の位置についてどういう形で特定したかというような事柄について、2番はそれぞれの配役の人の身長とか、あるいはその人の持ち物とか、どういう役柄になって、どこに立ったとか、そういったことが書いてある。3番はビデオカメラをどこに設置したかというようなことが書いてある。4番は実際にビデオの再現内容について、それぞれのキャプションを簡略に書いたものが4です。ただ、端的にいえば、4はなくても、ビデオを見ればわかることかもしれません。4の(1)、(2)ですね。
  60. 神坂裁判長 4は要らないかもしれないと。
  61. 弁護人2 そうですね。ビデオの説明なので、ビデオを見ていただければ、4の(1)、(2)、ただ、(3)のところは、やっぱり経過としては必要なのかなと思いますので、そんなこと。
  62. 神坂裁判長 そうすると、1から第2項といわれている部分の1から3。
  63. 弁護人2 1から3は必要だと。やっぱり経過としていうと、もうどのあたり、検事さんも見ていただければわかると思うのですけれども。あと、ビデオの制作や編集作業について書いてあるのが5なんですけども、これもやはり客観的な事実関係なので、そういう撮影したのをどういう形で編集して、どういうふうに映っているのかということが書いてあるので、それもあった方がいいと思うんですね。ただ、6については。
  64. 神坂裁判長 その辺は午後になろうかと思っていますので、そのときまでにその点を検討するということはできますかね。
  65. 検察官1 それはできますが、検察官としては、確かに弁護人のおっしゃるように、どの位置に、だれが、どの役の人が立ったかということについては、明らかにしておいた方が、ビデオを見るのにわかりやすいかなと。それは確かにそのとおりだと思いますので、その点については詳細については至急検討しますけれども、その点については同意する用意はあります。  ただ、その辺についてはDVDを見ればわかるか、もしくはそもそもその前提となる条件として、検察官は弁護人のいっていることに賛同しておりませんので、その余については同意できないかということになるだろうと思います。
  66. 弁護人1 そうすると、出演者が全部で12名おりまして、その配置図についてまでは同意されておるので、その配置図を見ても、結局だれがだれの役だかわからない。
  67. 検察官1 そのとおりだと思います。
  68. 弁護人1 その点をお願いしたいので。あとは午後間に合わせるには、ちょっとこちらも準備をしないといけないので、できれば早く意見をいただかないと間に合わないということが、実際、現実問題としてありますので。
  69. 弁護人2 それから、今確認のために、ビデオカメラの位置は、これはどこにカメラを設置したかということは、やはり確定しておかないといけないと思うので、それは3ですね。それから1は、少なくとも(1)、(2)、(3)については。
  70. 検察官1 済みません、実は私の方は、もう1個の方の報告書を見ながらしゃべっておりましたので、さっきの3ページ云々というところは間違っています。
  71. 弁護人2 そうですよね。ちょっと間違っていました。
  72. 神坂裁判長 つまり、本日付で検察官の意見書、2の(2)から不同意とされている部分について、それ以降ということで弁護人が引用されているのですが、先ほどいいましたけれども、1から3。
  73. 弁護人2 第2まで。
  74. 神坂裁判長 第2項ということで。
  75. 弁護人2 そうです。第2項。第2の1項から3項です。
  76. 神坂裁判長 それから5項ですか。
  77. 弁護人2 そうですね。
  78. 神坂裁判長 5項はなくてもいいということですか。
  79. 弁護人2 第4項は見ればわかるという。
  80. 神坂裁判長 全体として1から5の部分ですね。
  81. 弁護人2 そうです。全体としては1から5は一番必要だと思うのです。
  82. 神坂裁判長 検察官の方で同意意見という形で検討いただけるかどうか。
  83. 弁護人2 そうです。特にあえていえば1、2、3、5が必要かなと私は思います。
  84. 神坂裁判長 ただ、このうちの4については、あえていえば不要であるともいえる。
  85. 弁護人2 ただ、4の(3)だけは必要です。(1)、(2)は、もうビデオだけ見ればわかるんですけれども、(3)はビデオだけ見てもわからないので。
  86. 神坂裁判長 えっ。
  87. 弁護人2 4のうち、現実にいうと(1)、(2)、(3)とございまして、(3)だけは必要だと。
  88. 神坂裁判長 一応検察官の方でご検討いただけるということでよろしいですかね。  変わらないということであれば、ちょっと対応を考えないといけませんので。
  89. 検察官1 はい。
  90. 神坂裁判長 今すぐ結論を出せといっているわけではなくて、結論を出すかどうか対応を検討していただけるかどうかを。
  91. 検察官1 もちろん検討はしますし、ただ、かなり細かい認否というか、あれになると思います。つまり客観的な部分について。  何をもって客観的というかという問題もありますけれども、検察官が客観的というふうに考える部分について、そこまで争うものではありませんけれども、弁護人の評価等が入っている部分がございますので、そこのところについては同意できないということになるかと思いますので、そうなると、例えば1つの文章の中にも、そういう部分とそうでない部分とがありますので、それはかなり細かい形になるとは思います。
  92. 神坂裁判長 一応そういう点も含めてご検討いただく。要望としては、文章の箇所が部分的になると、非常に読みづらくなると思うので、まとめて同意いただけるものならば、お願いしたいところではありますけれども、検察官のご意見がありますので、そこはご検討いただければと思います。  一応2の(2)については、現状のところはいいと思いますけれども、その余について同意にかえられるということでありましたら、ご検討願えればということです。
  93. 検察官1 はい。それはいつというか、午後までにということですか。
  94. 神坂裁判長 はい。
  95. 検察官1 はい。
  96. 神坂裁判長 できるだけ被告人質問の前に。
  97. 検察官1 ご趣旨はわかります。できるだけ努力いたします。
  98. 神坂裁判長 ということなので、この段階では意見までいただいたということで、決定そのものは、DVDを含めて書証についての検察官の意見を、書証を含めて確定するのは保留します。  それでは、書証については以上のとおりということで、本日の証人尋問に入りたいと思います。
  99.      

    〔K証人、入廷〕

  100. 神坂裁判長 お待たせして申しわけありませんでした。  まず最初にお名前について確認させていただきますけれども、お名前、生年月日、職業、住所は、先ほどカードに書いていただきましたけれども、そのとおりで間違いないでしょうか。
  101. K証人 はい、間違いありません。
  102. 神坂裁判長 それでは、この事件で証人としてお伺いいたしますので、宣誓していただいてから伺いますので、宣誓書を読み上げてください。お願いします。
  103. K証人 宣誓。良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。証人、K  。
  104. 神坂裁判長 それでは、いすにおかけになってください。
  105. K証人 はい。
  106.      

    〔K証人、着席〕

  107. 神坂裁判長 では、今から順番にお話を聞いていくわけですけれども、今宣誓していただきましたので、念のためということなんですけれども、宣誓された証人がわざとうそをいうと、偽証ということになって、処罰されるおそれがあるということを知識として知っておいてください。
  108. K証人 はい。
  109. 神坂裁判長 それで、尋問の順番ですけれども、結果的というか、現状で双方申請をとる、双方で採用しております証人ですので、弁護人の方はどうされますか。
  110. 弁護人2 弁護人からお願いできればと思います。
  111. 神坂裁判長 検察官の方はどうですか。意見としては……。
  112. 検察官1 検察官としても、検察官の方からやらせていただきたいと考えております。
  113. 神坂裁判長 では、ここは弁護人の方から主尋問をしていただくということで。  先に弁護人からということでお願いします。
  114. 弁護人2 1点だけ。証人に図面をお示ししたいと思っておりまして、そのときに示す図面は、先ほど検事さんのお話に出ておりました報告書のその2の方のご同意をいただくということでお話しいただいていました添付図面1というのがございますけれども、それの写しがございますので。
  115. 神坂裁判長 そちらからされるんですか。
  116. 検察官1 添付図面1というもの。
  117. 弁護人2 そうです。客観的な意見書の。
  118. 検察官1 はい。同意して……。
  119. 神坂裁判長 提示自体はよろしいということですかね。
  120. 検察官1 同意の予定です。
  121. 神坂裁判長 それでは結構です。
  122. 弁護人2 では、弁護人の「弁護人2」の方から質問させていただきます。  これから証人というふうにお呼びします。お答えになるときは裁判官の方を向いてお答えになってください。
  123. K証人 はい。
  124. 弁護人2 まず証人の身長ですけれども、何センチですか。
  125. K証人 173センチです。
  126. 弁護人2 体重は。
  127. K証人 60キロです。
  128. 弁護人2 今回ここに来ていただいたのは、電車内で痴漢の事件があって、証人が犯人を逮捕したということの関係で来ていただいているのですけれども、この事件があった当時の証人の服装について、もし覚えていたら、大体こんな格好だったということをお話しいただけますか。
  129. K証人 黒いTシャツの上に紺色のワイシャツなどをはおって、ズボンは色落ちしたジーンズ、グレーがかった色落ちしたジーンズです。
  130. 弁護人2 持ち物ですけれども、かばんとか、傘とかで、何か記憶に残っていることはありますか。
  131. K証人 リュックサック、小さいものを背負っていました。
  132. 弁護人2 傘はお持ちになっていらっしゃったんですか。
  133. K証人 傘は折り畳みをかばんの中に常に入れています。
  134. 弁護人2 証人は泉岳寺から京浜急行に当日乗られたということですか。
  135. K証人 はい。
  136. 弁護人2 一応念のために聞きますけれども、勤務先の場所はどちらですか。
  137. K証人 当時、(地名=S)です。
  138. 弁護人2 仕事が終わった後、電車に乗って泉岳寺まで来られた。
  139. K証人 はい。
  140. 弁護人2 泉岳寺から乗られた電車ですけれども、特急とか普通とか快速とか、そういう種類について記憶されていますか。
  141. K証人 快速の久里浜行きだったと思います。
  142. 弁護人2 泉岳寺を出発した時間ですが、何時ごろというのは、大ざっぱで結構ですが、もし覚えていらっしゃったら……。
  143. K証人 いや、特に記憶はないです。10時過ぎぐらいだったと思います。
  144. 弁護人2 電車に乗られたときの込みぐあいですけれども、どの程度の込みぐあいだったかというのは覚えていらっしゃいますか。
  145. K証人 人と体が密着したり、押し合ったりするようなほどではありませんが、かなり込んではきていました。
  146. 弁護人2 電車が揺れれば、人と触れたりする程度ぐらいですか。
  147. K証人 そうですね。
  148. 弁護人2 泉岳寺の次は品川駅にとまったんですか。
  149. K証人 そうです。
  150. 弁護人2 品川駅に着いて込みぐあいは変わりましたか。
  151. K証人 失礼、泉岳寺というか、品川での込みぐあいを先ほどいいました。
  152. 弁護人2 ああ、そうですか。  あなたが当時乗っていた車両の位置なんですけれども、覚えていらっしゃらないかと思いますけれども、前から例えば何両目とか、もしわかっていたら教えてください。
  153. K証人 何両目とかはわかりません。
  154. 弁護人2 あるいは1両の車両にドアが3つついている電車だと思うんですけれども、進行方向から数えて1番目のドアのところから入ったのか、2番目から入ったのか、3番目から入ったのかとか、もしわかったら教えてください。
  155. K証人 真ん中のドアだったと思います。
  156. 弁護人2 そうしましたら、先ほどお話ししました報告書その2の添付図面1の写しを示します。
  157. K証人 はい。
  158. 弁護人2 この図面はあなたがお乗りになった京浜急行の車両の位置関係を図面で示したものなんですけれども、あなたからごらんになって左手側を蒲田駅の進行方向というふうにお考えいただいてご説明させていただきます。
  159. K証人 はい。
  160. 弁護人2 この図面の上の左と右、下の左と右に四角で長方形で囲っているものがございますが、ここには座席、シートがあるというふうに理解してください。
  161. K証人 はい。
  162. 弁護人2 そしてこの図面の真ん中に、大きく長方形の四角が書いてありますけれども、ここにはシートのパイプがあって、このパイプのところにつり皮がついていて、ピンク色の小さな四角が、この金属のパイプのところに書いてありますけれども、これはつり皮の位置を示しているものというふうにお考えいただきたい。
  163. K証人 はい。
  164. 弁護人2 あなたがお乗りになったドアは、この図面でいうと、この下の、左側のシートと右側の四角のシートの間にある、ここにドアがあって、ここから入ったという前提でお伺いしたいと思いますけれども。
  165. 検察官1 先生、まず証人の認識とその図面が合っているかどうかということと、それから、今、下のドアからとおっしゃいましたか。
  166. 弁護人2 はい。
  167. 検察官1 ということは、特に証人はいってないと思うのですが、その点をちょっと確認してください。
  168. 弁護人2 はい。では、先ほど私が説明しましたシートの位置やつり皮の位置ですけれども、正確には記憶していらっしゃらないと思うのですが、特にこれをごらんになって、証人の記憶と異なっている部分とかいうことはございますか。
  169. K証人 シートの位置を基準にすると、手すりのぶら下がっているレールが、全体的にもうちょっと枠として大きいような気がします。
  170. 弁護人2 ここに色を塗ったあたり。
  171. K証人 そうですね。シートの座席の端と並ぶような形、つなぐような形です。
  172. 弁護人2 先ほどの進行方向を前提にお伺いしますけれども、証人が電車に乗るときのドアというのは、この図面でいうと、上の方だったのか、下の方だったのか、覚えていますか。
  173. K証人 それは覚えていません。
  174. 神坂裁判長 ちょっと待ってください。この図面には進行方向は記載されていましたか。
  175.  
  176. 弁護人2 書いてないです。
  177. 神坂裁判長 じゃ、記載していただけますか。
  178. 弁護人2 じゃ、こちらの方で記載します。
  179. 神坂裁判長 というか、そもそも図面そのものがどういう前提で書かれているかということだと思うのです。
  180. 弁護人2 図面は進行方向の左側ということで記載しております。上のものにはそれが書いてあります。
  181. 神坂裁判長 向かって左側が進行方向という前提で書いてあるのですか。
  182. 弁護人2 そうです。つくられている図面です。
  183. 神坂裁判長 それを前提として今のことを書いてあるということですか。
  184. 弁護人2 わかりやすくするために、私の方でその上に進行方向を書き込みたいと思いますが、よろしいですか。
  185. 検察官1 こちらは構いません。
  186.      

    〔弁護人により記入〕

  187. 神坂裁判長 念のためにこの段階で裁判所に見せていただけますか。
  188. 弁護人2 はい。
  189.      

    〔裁判所に提示〕

  190. 神坂裁判長 結構です。
  191.  
  192. 2弁護人 証人が電車に乗られて進んでいって、最初に立ちどまった位置というのを、もしご記憶されていたら、どのあたりだか指し示していただけますか。
  193. K証人 進行方向を意識して乗ってなかったので、どちら側というのはちょっとわかりません。被害者と被告人の位置を示していただければ、被害者の位置を示していただければ、そこから示すことはできますが、進行方向を意識して乗っていませんでした。
  194. 弁護人2 被害者はですね。
  195. 弁護人1 被害者を後からやっていくわけだから、むしろ進行方向は前提とせずに、じゃ、進行方向はどっちかわからないけれども、どこと指定してもらうしかないんじゃないですか。それから被害者の位置を指定してもらうしかないんじゃないですか。
  196. 弁護人2 この図面はとりあえずやめて……。  弁護人の方で、被害者の想定した位置をここに書き込んでよろしいですか。
  197. 検察官1 被害者の位置ですか。
  198. 弁護人2 ええ。
  199. 検察官1 では、あくまで弁護人等で考える被害者の位置という前提があるのであれば、特にそれに対して異議を述べるものではありませんけれども。
  200. 弁護人2 あるいはあなたの方で進行方向を特に指し示されなければ、自分の位置と被害者の位置を書くことはできないですか。
  201. K証人 はい。
  202. 弁護人2 ああ、そうですか。それについてはその方がよろしいかと思います。
  203. 神坂裁判長 進行方向であるとか、被害者と加害者とか、そういうふうなことを考えないで、その座席の位置とドアの位置のみを前提として、どういう前提でも結構ですから、あなたがいた位置、それを図面の中に示してください。
  204. K証人 はい。
  205. 弁護人2 では、図面を書きかえますかね。進行方向を書き込んでしまいましたので。同じ図面ですけれども、別の紙。これには進行方向が記載されておりませんので。
  206. K証人 はい。
  207. 検察官1 今までの証言というのは残るんですか。
  208. 弁護人2 ……。
  209. 検察官1 なくなるわけではないんだと思いますけれどもね。わかりました。
  210. 神坂裁判長 改めて書証を示してください。
  211. 弁護人2 はい、わかりました。
  212. K証人 はい。
  213. 弁護人2 そうしたら、こちらに、K証人なので、Kというふうに書いていただけますか。
  214. K証人 はい。
  215.      

    〔証人により記入〕

  216. 弁護人2 自分の立っていた位置を今Kとお書きになりましたけれども、顔の向いていた、電車で立っていた位置ですね、方向についてご記憶がありましたら、それを矢印で示していただけますか。
  217. K証人 はい。
  218.      

    〔証人により記入〕

  219. 弁護人2 そちらに立っていたときのことについてですけれども、電車に乗っておられて、あなたの向かって左隣に人がいたかどうかというのは覚えていらっしゃいますか。
  220. K証人 特にどんな人とは覚えていませんが、込みぐあいからすると、いたと思います。
  221. 弁護人2 では、その人が女性だったか男性だったかということもおわかりにならないということですね。
  222. K証人 左隣は特に覚えていません。
  223. 神坂裁判長 済みません、今、向かって左隣といいましたね。
  224. 弁護人2 ご自分の左ですね。
  225. 神坂裁判長 証人から見て左隣という意味ですね。
  226. 弁護人2 はい、そうです。  今のような状況で電車に立っておられたときのことについて聞きますけれども、女性の声が聞こえたというようなことがあったのですか。
  227. K証人 はい。
  228. 弁護人2 声が聞こえたのは、品川駅を出てどのぐらいたってからだというようなご記憶がありますか。
  229. K証人 2〜3分だったと思います。
  230. 弁護人2 それはどんな声が聞こえたのですか。
  231. K証人 「やめてください」という声です。
  232. 弁護人2 「やめてください」という声。
  233. K証人 はい。
  234. 弁護人2 その声を聞いてあなたはどうされましたか。
  235. K証人 そちらを振り向きました。
  236. 弁護人2 振り向いたときに、女子高生、その声をした方が立っていた位置というのはわかりますか。
  237. K証人 はい。
  238. 弁護人2 そうしましたら、その位置を、この図面上に、やはり同じようにマルで囲って書いてください。
  239. K証人 はい。
  240. 弁護人2 そうしましたら、これは一応アというふうに振っていただけますか。
  241. K証人 はい。
  242. 弁護人2 その声を出していた女性というのは、外見からどんな人に見えましたか。
  243. K証人 女子高生に見えました。
  244. 弁護人2 女子高生といいますけれども、その女子高生が「やめてください」と話しかけているようにあなたの方で感じた人というのはいましたか。
  245. K証人 はい。
  246. 弁護人2 それは男性ですか。
  247. K証人 はい。
  248. 弁護人2 そうしましたら、あなたが振り返ったときにその男性が立っていた位置、それをこの図面上に記載していただけますか。
  249. K証人 はい。電車の向いている……。
  250. 弁護人2 済みません、じゃ、被害者の向いている位置に……。
  251. K証人 はい。
  252. 弁護人2 今被害者の向いている位置についてアのところに矢印を書いていただいた。
  253. K証人 はい。
  254. 弁護人2 では、その男性の位置のところにイというふうに書いていただけますか。
  255. K証人 はい。
  256. 弁護人2 あなたがごらんになったときに、その男性がつり皮につかまっていたかどうかというのは記憶されていますか。
  257. K証人 つり皮にはつかまってなかったです。
  258. 弁護人2 つかまっていなかった。
  259. K証人 はい。
  260. 弁護人2 その女子高生とその男性というのが距離的にどのぐらい離れていたかわかりますか。
  261. K証人 どのぐらいとは。
  262. 弁護人2 例えば何センチとか、何メートルとか。
  263. K証人 何センチまでは……。
  264. 弁護人2 難しいですか。
  265. K証人 メーター単位ではありませんけれども、すぐ後ろです。
  266. 弁護人2 例えばこの証人席の長い部分と短い部分、横と縦の部分がありますけれども、この短い方と縦の長さと比較すると、これとどのぐらいの感じになりますか。
  267. 検察官1 先生、それは、どこからどこまでの距離をお聞きになっているのですか。
  268. 弁護人2 被害者と被告人の間の距離です。
  269. 検察官1 被害者のどこと、被告人のどこの距離ですか。
  270. 弁護人2 じゃ、それを特定します。あなたの方で、被害者と被告人がどのぐらい離れていたかということを説明するときに、被害者のこの部分と被告人のこの部分が、このぐらい離れていたということを、もしいえるとしたら、いっていただけますか。例えば顔と顔でもいいし、胸と胸でもいいし、肩と肩とか、いろいろ言い方はあると思うのですけれども、ご自分のいいやすい言い方で。
  271. K証人 背丈も違いますし、これの短い方ぐらいの距離があったかどうかというぐらいか、それより近いか。もう身を引く動作をしていたので、僕が振り返った時点では。なので、それより短いところからそのぐらいまで。
  272. 弁護人2 距離的に。
  273. K証人 角度的に、間隔が見える角度ではないので、その点については大ざっぱな印象でしかありません。
  274. 弁護人2 わかりました。ただ、あなたの記憶としては、大ざっぱな印象としては、この証人席の短い方より、先ほどはかったら52センチありましたけれども、これよりも若干短かったのではないかと。
  275. K証人 若干というか、大分とにかく、すぐ後ろだった。
  276. 弁護人2 すぐ後ろだったと。  先ほどの女子高生の発言で「やめてください」ということをおっしゃっていましたけれども、それ以外に、そのとき引き続きといいますか、そのときに女子高生が何かいった言葉で覚えていることはありますか。
  277. K証人 「子供がいるのに恥ずかしくないんですか」。それから引き続き、「謝ってください」。あとは、「次でおりてもらいますから」といったと思いますけれども、そのあたりを順番に、振り返りつつ、少し間隔をあけながら、いっていました。
  278. 弁護人2 女子高生が話しかけているように見えた男性の行動ですけれども、この人は、あなたが見たときから、体の方向とか向きを少し移動させるとかいうようなことはあったのですか。
  279. K証人 少し間隔はあけていましたが、向きを大幅に変えたり、位置を大幅に移動できるほどすいてはいなかったので。
  280. 弁護人2 じゃ、この男性の向きですけれども、イのところに書いていただきたいのですけれども、これは女子高生が今話している間、この男性の向きが変わらないという前提でお書きになった方がいいですか。それとも、分けて、例えば最初こっちの方を向いていたけれども、その次にこっちの方を向いたというふうにお書きになった方がいいですか。どっちの方がいいですか。
  281. K証人 じゃ、最初の瞬間を1として、それ以降、大体を2。
  282. 弁護人2 そうですね。
  283.      

    〔証人により記入〕

  284. 弁護人2 そこのイのところに@とAと書いていますが、最初はこの@の方を向いていたと。
  285. K証人 最初は抗議の声に対して反応して向いていたように見えました、振り返った瞬間は。
  286. 弁護人2 その後、そうすると、この図だと、この男性の方向でいうと、男性にとって右の方を若干向くような感じですか。
  287. K証人 そうですね。二言目、三言目かわかりませんけれども、それ以降は、やや外す感じで。
  288. 弁護人2 外す感じで、これだと、ちょっと右の方に向きを変えたように書かれていますけれども、男性の方はつり皮につかまるとか、そういうような動作はありましたか。
  289. K証人 動作自体は確認していませんが、京急蒲田の駅に着くまで待っている間に、途中からつり皮につかまっていました。
  290. 弁護人2 そうすると、その男性がつり皮につかまった動作のときに見ていたわけではないので、どの段階でつり皮につかまったかはよくわからないということですか。
  291. K証人 はい。
  292. 弁護人2 では、もしその男性がつかまったつり皮というのがわかりましたら、そのつり皮を示していただけますか。
  293. K証人 恐らくこれだと思います。
  294. 弁護人2 この図面中にピンクでつり皮の位置が書いてありますが、そこの1つに、赤いマルで示した、恐らくこのつり皮につかまったんじゃないかと思ったということでよろしいですか。
  295. K証人 はい。
  296. 弁護人2 この男性というのは、あなたからごらんになって酒に酔っているような印象はありましたか。
  297. K証人 いや、それほど酔っているという印象はありませんでした。
  298. 弁護人2 今お話しになったように、女子高生が振り返って、男性が少し向きを変えるというようなことがあった後、あなたはどういう行動をとられましたか。
  299. K証人 ほかの乗客と同じように、一瞬あっけにとられて見ていたのですが、抗議の途中から女子高生は涙声になって、その後、泣き崩れており、ほかの人、近くにいる人も、特に声をかける様子がなかったので、何人かの人をかき分けて、女子高生の前に移動しました。
  300. 弁護人2 女子高生の方に移動したのですね。
  301. K証人 はい。
  302. 弁護人2 そうすると、声がしてからあなたが移動するまでの間というのは、どのぐらいの時間的な間隔があったのでしょうか。
  303. K証人 声、抗議全体が30秒あったのかわからないと思う。1分ぐらいはあったのかもしれないです。
  304. 弁護人2 その間、女子高生の体の向きというのは、どちら側を向いていたのか、もしわかったらお話ししていただけますか。
  305. K証人 おおよそ僕の方か、進行方向の方に体が向いていました
  306. 弁護人2 そうすると、先ほどの矢印と区別するために、今書かれました矢印に……。ちょっと色違いにしましょうか。じゃ、今赤で書いていただいたのですけれども、わかるようにするために、その抗議の間、女子高生が向いていた方向を、青で矢印を塗りつぶすような形で……。
  307. K証人 体の向きですか。
  308. 弁護人2 そうですね。
  309.      

    〔証人により記入〕

  310. 弁護人2 そうすると、体の向きというふうにおっしゃったのは、女子高生の顔がこちらの方を向いているというふうに。それとも、いわゆる足というか、下半身というか、腰というか、そういうのも、そちらの方、その矢印の方を向いていたというふうに。
  311. K証人 体の向き。
  312. 弁護人2 体の向きですね。
  313. K証人 振り返る、肩を回して、頭を振って、振り返った感じです。
  314. 弁護人2 そうすると、その男性に抗議するというか、話しかけるときは、一応男性の方に顔を向けているということなんですか。
  315. K証人 はい。
  316. 弁護人2 要するに……。
  317. K証人 一応とはどういうことですか。
  318. 弁護人2 立つ位置は基本的にこの矢印の方向を向いた状態で、上半身を男性の方に向けて抗議をし……。
  319. K証人 一言いっては前に自分の体を戻して、また続く。
  320. 弁護人2 抗議するときに首を振って、またもとの位置に戻して、そういうようなことを行っていたということですか。
  321. K証人 はい。
  322. 弁護人2 さて、その次に移りますけれども、先ほどの話で、あなたはその女子高生の方に移動したということだったんですけれども、その女子高生に声をかけたんですか。
  323. K証人 はい。
  324. 弁護人2 声をかけたときのあなたの位置がもしわかりましたら、Kの2という形でご自分の位置を書いていただけますか。
  325. K証人 赤で。
  326. 弁護人2 ええ、結構です。
  327.      

    〔証人により記入〕

  328. 弁護人2 あなたは具体的にどんなことを聞いたんですか。
  329. K証人 「さわられたの?」と聞きました。
  330. 弁護人2 それに対して、女子高生は。
  331. K証人 勢いよく、うなずきながら「はい」と答えました。
  332. 弁護人2 その後、あなたは何か聞きましたか。
  333. K証人 突き出す意思があるかどうか確認するために「突き出す?」と聞きました。
  334. 弁護人2 そしたら、女子高生は。
  335. K証人 「はい」と答えました。
  336. 弁護人2 その話を聞いて、あなたは、あなたが逮捕した男について、この人が女子高生にさわった犯人だというふうに考えた。
  337. K証人 えっ。
  338. 弁護人2 あなたが逮捕した男性について、今の女子高生の話を聞かれて、その男が女子高生をさわった犯人だろうというふうに……。
  339. K証人 いや、それは聞かれる前から、抗議している相手がだれかわかっていましたので。
  340. 弁護人2 ああ、その時点で。
  341. K証人 はい。
  342. 弁護人2 じゃ、「突き出すの?」ということを聞いて、女子高生の意思を確認したわけですか。
  343. K証人 はい。
  344. 弁護人2 その後あなたはどういう行動をとったのですか。
  345. K証人 やや横に移動して、その男性に向かって「突き出すからね」と、一応返答という、返事というか。
  346. 弁護人2 した。
  347. K証人 しました。
  348. 弁護人2 その男性に確認したとき、あなたも移動されているのですか。
  349. K証人 1歩近づいたと思いますけれども。
  350. 弁護人2 そうしましたら、それをK3というふうにして書いていただけますか。
  351.      

    〔証人により記入〕

  352. 弁護人2 あなたが、その男性に、そういうふうにK3に移動したときですけれども、相手の男性の位置というのは、このイの位置でしたか。それともイの位置とは違っていたんでしょうか。
  353. K証人 この時点ではまだこの位置にほぼいたと思います。
  354. 弁護人2 この段階でつり皮にこの男の人がつかまっていたかどうかというのはわかりますか。
  355. K証人 つかまってなかったと思います。僕の左手で男性の右腕を少したたくような感じでしたので、右手はおりていたと思います。
  356. 弁護人2 あなたはその男性がどんなバッグを持っていたかどうかとか、あるいはどっちの肩にバッグをかけていたとか、記憶は何かありますか。
  357. K証人 それはいつ気づいたかとか、そういうことですか。
  358. 弁護人2 今例えばK3の位置に移動して、左手でその男性の腕をたたくようにしたというふうにおっしゃいましたね。
  359. K証人 そうですね。触れる、たたくというほどではないんですが。
  360. 弁護人2 そのときに例えば何か男性がバッグを持っていたとか、傘を持っていたとか。
  361. K証人 その時点で持ち物に注意がいったり、気づいたかどうかは、ちょっと覚えていません。
  362. 弁護人2 先ほどの話というのは、あなたの左手で、男性のどちらの腕をたたくようにしたのですか。
  363. K証人 右腕。こういうしぐさですか。
  364. 弁護人2 右腕を少し軽くたたくという。
  365. K証人 はい。
  366. 弁護人2 京急蒲田駅にその後着くまでの間ですけれども、あなたは今お書きになった位置にいたのですか。
  367. K証人 いえ、被害者もみんな余り身動きがとれない状態だったのですが、被害者も犯人にお尻を向けているような形になるので、気分が悪いだろうと思って、間に割り込んで、ちょうど入れかわる感じで。
  368. 弁護人2 そうすると、ちょうどこの図面中には書きにくいですか、あなたの位置を。
  369. K証人 別に書いてもいいですけれども。
  370. 弁護人2 では、色違いで書いていただけますか。入れかわるというのは、あなたと被害者が入れかわる。被告人も移動する。イの位置に男性も移動するのですか。
  371. K証人 いや、男性はややドア寄りに移動して、それから、ようやくつり皮につかまるような感じでした。
  372. 弁護人2 そうしますと、これは何色で。
  373. K証人 青で。
  374. 弁護人2 青でお書きいただけますか。
  375.      

    〔証人により記入〕

  376. 弁護人2 じゃ、そのときのイの位置にいた男性が若干移動したというのがわかりましたら、同じようにちょっと書いていただけますか。
  377.      

    〔証人により記入〕

  378. 神坂裁判長 弁護人、まだこの用紙を示しますか。
  379. 弁護人2 はい。
  380. 神坂裁判長 書く量としてはこれで限界かなと思いますけれども、どうされますか。  それと、先ほど電車の進行方向を書き入れた図面がありましたが、あれもちょっととりあえず提出していただけますか。
  381. 弁護人2 はい。
  382. 神坂裁判長 あと、これ以降示すのは新しい図面でやってもらって……。
  383. 弁護人2 わかりました。
  384. 神坂裁判長 それまでの経過を示すために、こちらを示す必要があれば申し出てください。
  385. 弁護人2 一応じゃお願いします。
  386. 神坂裁判長 では、これを……。
  387. 弁護人2 今お書きいただいたように、あなたが被害者の後ろに立って、緑色で書いてもらったのでいいでしょうか。
  388. K証人 大体こんな感じ。
  389. 弁護人2 京急蒲田駅に着くまでの間ですけれども、あなたとその男性とのやりとりというのは、先ほどおっしゃった「突き出すからね」ということ以外にはありましたか。
  390. K証人 いや、何もありません。
  391. 弁護人2 男性の方で何かあなたに話しかけるということはありましたか。
  392. K証人 ありません。
  393. 弁護人2 その男性の動作といいますか、つり皮につかまっている動作とか、動きとかはどうですか。
  394. K証人 印象として残っているポーズは、つり皮にぶらさがるような感じでつかまって目を閉じていました。
  395. 弁護人2 目を閉じていた。
  396. K証人 はい。
  397. 弁護人2 余りあなたの問いかけに何か反応して話しかけてくるとか、そういう状況ではなかったわけですね。
  398. K証人 いや、問いかけていません。
  399. 弁護人2 そういう状況が京急蒲田駅に着く直前まで続いたということですかね。
  400. K証人 はい。
  401. 弁護人2 それ以降のことについて聞きますけれども、流れとすれば、あなたが動き出したといいますか、行動をとり出すのはどのぐらいの時期なんですか。
  402. K証人 電車のアナウンスが流れたり、電車にブレーキがかかったり、順に電車をおりる準備をするタイミングと同じぐらいだと思います。
  403. 弁護人2 あなたは具体的にどういう行動をとったのですか。
  404. K証人 その男性に並んで男性のネクタイを左手でつかみました。
  405. 弁護人2 あなたがその男性のネクタイを左手でつかんだときというのは、電車のドアからおりる直前ということですか。それとも、まだ駅に着いて、例えば電車内にいるときなんですか。それともおりる直前ですか。
  406. K証人 直前というのがどのぐらいかわからないのですけれども、とまり切ってなかったかもしれませんが、それほど長くはない、ドアがあくまでの時間は。
  407. 弁護人2 あなたがその男性のネクタイをつかんだのは、ドアの近くですか。それとも、ドアから少し離れた場所ですか。
  408. K証人 ドアの近く。ほかの乗客はもうよけてくれていたので、ドアに向かって先頭で2人並びました。
  409. 弁護人2 そうすると、ドアに向かって先頭で、あなたと被告人が並んで立っているような状況があったんですか。
  410. K証人 はい。
  411. 弁護人2 そのときにドアが開く直前というのは、少し抵抗があるんですかね。
  412. K証人 直前というか、とまったかとまらないかぐらいの時間じゃないかと思います。
  413. 弁護人2 そのときにネクタイをつかんだと。
  414. K証人 はい。
  415. 弁護人2 そのままドアが開いて、先頭で2人が出ていったということになるんですか。
  416. K証人 はい。
  417. 弁護人2 あなたの記憶では、開いて出ていったドアというのは、この図面でいうと、上の方のドアだったか、下の方のドアだったか、覚えていますか。
  418. K証人 上の方だったと思いますが。それほど移動した記憶もないのであれですけれども。
  419. 弁護人2 電車内にいるときに、例えばあなたが携帯電話で警察に電話したりとか、そういうことはしましたか。
  420. K証人 いえ、しませんでした。
  421. 弁護人2 あるいは乗客のだれかがそういうふうなことをしている様子だったということはありますか。
  422. K証人 いえ、それもありません。
  423. 弁護人2 それから、あなたともう一方、今回の逮捕に協力した方がいらっしゃるんですか。
  424. K証人 はい。ホームにおりてしばらくしてからなんで、どの時点から手伝っていただいたかは記憶にありません。
  425. 弁護人2 電車内では、特にあなたはその人を意識したという記憶はないんですか。
  426. K証人 ありません。ただ、何人かの人がいろいろ声をかけてくれてはいました。
  427. 弁護人2 そうしましたら、以後の状況について交代して……。
  428. 弁護人3 では、弁護人の「弁護人3」からお聞きします。  少しだけ前にさかのぼったところから聞きますけれども、先ほど、まず最初に品川駅を出てから2〜3分で女子高生の声を聞いたというふうにお答えになったと思うのですけれども、その2〜3分には何か根拠があるのですか。
  429. K証人 いや、特に。2〜3分だと思っていただけです。
  430. 弁護人3 単なる何かご自分の感覚的なものということですか。
  431. K証人 そうですね。あと根拠として、逆算でいえば、品川から京急蒲田までが約10分。いろいろやりとりを聞いてから、声をかけて、一段落して、待っている間が5分ぐらいには感じられたので、大体そのぐらいかな。
  432. 弁護人3 先ほどの話だと、証人は痴漢行為自体を見ていないわけですね。
  433. K証人 見ていません。
  434. 弁護人3 そうすると、先ほどのお話からすると、被告人を突き出すということになったというのは、まずその女子高生が被告人に対して抗議をしていたからということになるわけですか。
  435. K証人 それは、だれを突き出すかということを特定した根拠という意味ですか。
  436. 弁護人3 そうです。
  437. K証人 はい、そうです。女子高生が抗議していた男性がそこで顕著に目立っていたので、その人と判断しました。
  438. 弁護人3 顕著に目立っていたというのはどういうことをおっしゃっているのですか。
  439. K証人 要するに、一言で浮いているというんですか。そもそも女子高生の顔の向きがはっきりとこの男性に向かっていましたし、ほかの乗客全員がそちらを注視しているという状況でした。
  440. 弁護人3 つまり、女子高生の声を聞いてそちらを向いたときに、女子高生は位置を移動していたということはありますか。
  441. K証人 いえ、ありません。ただ、体をねじっているので、そういう動きはありますが。
  442. 弁護人3 逆に被告人の方を見たとき、被告人が移動していたということはありますか。
  443. yK証人 やや身を引く感じはありましたね。右手を挙げて引く動作はありましたけれども、さっきもいったように、足を歩んだりなんかするほどのスペースはありませんので、特に移動はありません。
  444. y神坂裁判長 今弁護人が尋問されたから、念のために確認するのですけれども、あなたがそのときに車内でごらんになって、あなたがネクタイをつかんでおりた男性というのは、あなたの向かって右手におられる方で間違いないですか。
  445. K証人 はい、間違いありません。
  446. 弁護人3 次に、おりるときの話に急に飛びますけれども、前の図面の方が、今までいろいろ書き込んでもらった図面の方がわかりやすいと思うのですけれども、おりた側というのは、この図面でいうと、どちら側ということでしょうか。
  447. K証人 先ほどお答えしたように、上だったと思いますが、最初答えたように、進行方向の意識も余りなかったぐらいなので、余り定かではありませんが、そのままするっとおりたと思うので、近い方のドアだったと思います。
  448. 弁護人3 日ごろから証人は京急をご利用になっていますね。
  449. K証人 いや、利用し始めてまだ1カ月かどうかというところでした。
  450. 弁護人3 そうだったんですか。品川と蒲田が開くドアの方向というのは同じではないですか。
  451. K証人 そういうのも疎いです。
  452. 弁護人3 今までの図面はちょっと書き込みが多いので、新しくもう1枚図面を用意してあるのですけれども、被告人と女子高生とそして証人自身が今までの図面に書き込まれていますね。
  453. K証人 はい。
  454. 弁護人3 そのほかの方で覚えておられるのはどなたかいますか。
  455. K証人 いえ、特にいません。
  456. 弁護人3 一緒に逮捕された方はおられましたね。
  457. K証人 はい。
  458. 弁護人3 その方は、あなたが気づいた限りでは、どの辺におられたんですか。
  459. K証人 いや、特に気づいていません。
  460. 弁護人3 証人がもう1人の逮捕者の方を認識したのはどの時点ですか。
  461. K証人 ホームで男性が大分戻ろうとする動作をしていたので、要するに、結構暴れていたので、それをやっている途中から、徐々にいろいろあれして、周りについてきてはいたので、ああ、そういえば、さっき電車内にもいた人だなとは思って、そういう感じの記憶の仕方です。
  462. 弁護人3 そうすると、かなりのそれ以外の乗客というものについては記憶はないですか。
  463. K証人 ありません。もちろん年配の方がいたとか、あと、最初に女子高生がいった子供が、どこかの段階で、ああ、この子供たちのことをいっていたんだなとか、そういうのを視界の端には確認していますが、特に印象に残るようなことはありません。
  464. 弁護人3 視界の端には確認したということでおっしゃると、子供というのは何人ぐらいいたんですか。
  465. K証人 複数はいたと思うんですが、そんなに多くはないと思います。
  466. 弁護人3 複数だけれども、何人かは記憶にないということですか。
  467. K証人 そうですね。
  468. 弁護人3 子供のご両親というのも近くにいたのがわかりますか。
  469. K証人 両方いたかどうか定かではありませんが、1人大人が話しかけていたのは覚えています。いっていた内容は覚えていません。
  470. 弁護人3 それは男親ですか、女親ですか。
  471. K証人 女親だったような気がしますけれども、それも定かではありません。
  472. 弁護人3 今までの方の図面はもう書き込んでしまったので、新しい図面で子供がいたあたりというのは、大体書くことができますか。
  473. K証人 はい。
  474. 弁護人3 じゃ、それをちょっと書いてみていただけますか。
  475.      

    〔証人により記入〕

  476. 弁護人3 まず、マルをつけていただければ。
  477. K証人 被害者がここ、いいですか。
  478. 弁護人3 ここから書き込んでいただいたんですね。
  479. K証人 電車内の空間に対して書けばよかったんですか。
  480. 弁護人3 いや、もう書いてしまったんで、それで結構です。
  481. 検察官1 いつの時点かということを記入していただければと思います。
  482. 弁護人3 そうですね。次に子供も書いていただくわけですけれども、子供を認識した時点というのはいつになるのですか。
  483. K証人 恐らく声をかけて、位置を入れかわって、一段落した時点だと思います。
  484. 弁護人3 子供はどのあたりにいたんでしょうか。
  485. K証人 このあたりに子供とその引率している大人の方といました。
  486. 弁護人3 これを見ると、女子高生の真後ろぐらいになるんですけれども、そんな感じですか。
  487. K証人 そうですね。真後ろ……。
  488. 弁護人3 この図面だと真後ろに見えるんですけれども、この図面でいうと、もっと下寄りではないですか。
  489. K証人 どのぐらいですか。
  490. 弁護人3 いや、どのぐらいかはともかく。
  491. K証人 細かいことは、はっきり覚えていません。
  492. 弁護人3 大体の印象ということで、正確な位置ではないということですか。
  493. K証人 そうですね。位置が入れかわった状態なので、女子高生も僕に対していますので、後ろといわれても、どちらが後ろか、ちょっと何ともいえないんですけれども。
  494. 弁護人3 これは大きく青いマルで書かれましたけれども、これが子供2人分ということなんですか。
  495. K証人 2人分というか、そうですね、そのあたりです。
  496. 弁護人3 そのお母さんらしき人はどこら辺にいたのですか。
  497. K証人 ちょっとわかりません。
  498. 弁護人3 じゃ、ここで裁判所に……。
  499.      

    〔裁判所に提示〕

  500. 弁護人3 色違いなので、わかりやすいですけれども、じゃ一応「子供」ぐらい中に書いていただけますか。
  501.      

    〔証人により記入〕

  502. 弁護人3 ちなみに、先ほど記憶に残っているとおっしゃった年配の男性というのはどの辺にいたんですか。
  503. K証人 つり皮につかまっている男性よりドア側の方にいたと思うのですが。
  504. 弁護人3 つり皮につかまっている男性というのはだれのことですか。
  505. K証人 最初に捕まえた人です。
  506. 弁護人3 被告人のことですね。
  507. K証人 はい。
  508. 弁護人3 被告人よりもドア側にいたという記憶。
  509. K証人 そうですね。そのあたりにも人が大勢いたんで、そのあたりにいた方がおりる直前にアドバイスを受けた方の1人だったと思います。
  510. 弁護人3 じゃ、とりあえずその位置も書いていただけますか。
  511. K証人 位置はちょっと特定できません。
  512. 弁護人3 特定できずに、ただ被告人よりもドア側にいたことだけがわかる。
  513. K証人 よりは反対。
  514. 弁護人3 わかりました。それ以外はもう記憶にはないということですか。
  515. K証人 はい。
  516. 弁護人3 蒲田駅からおりたときに、駅員の方は既にホームに来ていましたか。
  517. K証人 いえ、来ていません。
  518. 弁護人3 ホームに着いてから、「駅員さんを呼んでください」といったけれども、周りの人は協力しなかったということはありましたか。
  519. K証人 いえ、ありません。
  520. 弁護人3 証人は事件のことを、その後、勤務先の同僚の方に話したことはありませんか。
  521. K証人 あります。
  522. 弁護人3 その人がインターネットのホームページにそのことを書いているのはご存じですか。
  523. K証人 知りません。
  524. 弁護人3 実はそこには、ホームに着いてから「駅員さんを呼んでください」といったけれども、周りの人は協力しなかったということが……。
  525. 検察官1 異議です。それは何の証拠にもなってないと思いますから。
  526. 神坂裁判長 引用されているのかもわからないので。実際にそういう記載があるのかないのかも確認のしようがないので、質問を変えていただけますか。
  527. 弁護人3 わかりました。  駅事務室に行った後ですが、証人も駅事務室に行ったのですか。
  528. K証人 はい。
  529. 弁護人3 そうすると、駅員はどこから登場するんですか。
  530. K証人 駅員さんは途中まで迎えに来てくれましたが、押さえてくれるのかと思ったら、押さえずに、「こちらへどうぞ」と方向を示してもらったので、最後まで僕が事務室まで連れていきました。
  531. 弁護人3 途中から駅員が来たということは、駅事務室がどちらの方向にあるかは、証人はご存じだったということになるのですか。
  532. K証人 いえ、わからなかったので、途中で周りにいる人に「呼んでください」といったら、駅員さんがそのうち駆けつけてきて、「こちらへどうぞ」と方向を示したということです。
  533. 弁護人3 そうすると、ホームにおりてから、しばらくしてから、やはり駅員を呼んでくださいということをいったわけですか。
  534. K証人 はい。抵抗が激しかったので、呼んできていただいて、それで押さえた方が楽だと思いました。
  535. 弁護人3 抵抗が激しかったということですけれども、そのとき被告人は何か言葉をいっていなかったですか。
  536. K証人 いっていました。
  537. 弁護人3 どういう言葉をいっていましたか。
  538. K証人 「彼女と話させてください」と繰り返していました。
  539. 弁護人3 証人としては、彼女と話させてやろうかとは思わなかったのですか。
  540. K証人 思いません。
  541. 弁護人3 それはどうしてですか。
  542. K証人 いや、それは、まず被害者はまだ泣き続けていますし、被告人はもうかなり大声を張り上げて暴れている状況だったので、その場で僕が判断して話させることではないと思ったので、まずは駅事務室に行くのを優先しました。
  543. 弁護人3 駅事務室に行った後ですが、証人も駅事務室に入ったのですか。
  544. K証人 入りました。
  545. 弁護人3 駅事務室のどこにいたか覚えていますか。
  546. K証人 僕がですか。
  547. 弁護人3 はい。
  548. K証人 入り口付近。
  549. 弁護人3 本日提出予定の平成18年9月25日付(Y=駅員)検察官調書添付図面を示したいのですが。これはY調書のサインがついているものですね。
  550. 検察官1 はい。 
  551. 弁護人3 じゃ、示します。
  552. 検察官1 結構ですけれども、これはYさんがお書きになっているものなので、そのことを前提にいっていただけますか。
  553. 弁護人3 わかりました。これは駅員のYさんという方がおられたんですけれども、その方が検察官に対して、事務室の感じはこんな感じということで書かれた図面なんです。あなたがおられた場所というのは大体どの辺なんですか。
  554. K証人 こちらに移動しつつ、大体このあたりで時々のぞいて様子を見る程度です。
  555. 弁護人3 先ほどアと書かれたので、じゃ、ここにもアと書いていただけますか。
  556. 神坂裁判長 先ほどはKと書かれたのですね。
  557. 弁護人3 済みません、Kと書いていただけますか。
  558.      

    〔証人により記入〕

  559. 神坂裁判長 この図面で書かれた事務室の出入り口から入ったところの駅事務室の配置というのは、大体あなたの記憶と合っていますかね。
  560. K証人 はい。その斜線の部分に仕切りがあって、そこに被害者の女子高生が中に座っていて……。
  561. 弁護人3 今ちょうど裁判所からのご質問にお答えになりましたけれども、女子高生はこの斜線のあたりにいたんですか。
  562. K証人 はい。
  563. 弁護人3 大体どの辺にいたんですか。
  564. K証人 ちょっと仕切りがあって、仕切りの中にいたので、はっきりわからないのですけれども、入って、そんなに奧までは行ってないと思います。
  565. 弁護人3 もう1人の逮捕者の方はどこにおられたのですか。
  566. K証人 僕と並ぶ形で、時々は位置を入れかわったりしていたかもしれませんが、警察が来るまでちょっと時間があったので、大体並んで、2人、出入り口のあたりに立っていました。
  567. 弁護人3 なるほど。先ほどKと書かれたあたりに大体2人で立っていた、そういう状況だったわけなんですか。
  568. K証人 はい。
  569. 検察官1 裁判長、恐れ入ります、それほどうるさいことをいうつもりはないんですが、この証人尋問は、車両内の状況等に終始するものと理解しています。
  570. 弁護人3 あと数質問で終わりますので。
  571. 神坂裁判長 続けてください。
  572. 弁護人3 はい。  女子高生はこの駅事務室の中で事件について何か話していましたか。
  573. K証人 お母さんに電話していました。
  574. 弁護人3 それ以外に何か話はしていましたか。
  575. K証人 それ以外は特に記憶にないですけれども。
  576. 弁護人3 痴漢の対応とかについては話はしていないですか。
  577. K証人 痴漢の対応とは。
  578. 弁護人3 どのような痴漢に遭ったとかいうことについて。
  579. K証人 どのようなというのは。
  580. 弁護人3 どういうところをさわられる痴漢とか、そういうこと。
  581. K証人 痴漢の行為の状況ですか。
  582. 弁護人3 そうです。
  583. K証人 いや、それについては話してなかったと思いますが、印象に残っているのは、泣きながら、すぐに携帯でお母さんに電話して、「お母さん、また痴漢された」といって泣いていました。
  584. 弁護人3 その場に警察官が来たんですよね。
  585. K証人 はい。
  586. 弁護人3 女子高生は警察官に事件のことを説明していたのではないのですか。
  587. K証人 ……。
  588. 弁護人3 その場に警察官が来ますよね。そこでは女子高生は警察官に事件のことを説明するのではないですか。
  589. K証人 さあ、どうですかね。警察官も結構な人数がどやどや来たのであれですけれども、比較的早く移動していったと思いますが。だから、まずは被告人と被害者と逮捕者を確認するので大分何人も質問されたりして、その間に、どのぐらい話をしたか、ちょっとはっきりしたことはわかりません。
  590. 弁護人3 被告人の声は聞こえましたか。
  591. K証人 いつですか。
  592. 弁護人3 この駅事務室内で。
  593. K証人 まだ相変わらず「彼女と話させてください」と大声を上げていました。
  594. 弁護人3 記憶に残っているのはそういう言動ですか。
  595. K証人 はい。あと、移動しようとしたので、駅員さんが強く押さえつけていました。
  596. 弁護人3 そういう状況も見ていたということですか。
  597. K証人 はい。
  598. 弁護人3 私からは以上です。
  599. 弁護人4 1点だけ。弁護人の「弁護人4」から伺います。  あなたは品川駅を出て2〜3分のところで女性の声を聞いたといいましたね。
  600. K証人 はい。
  601. 弁護人4 それまであなたは何をされていたんですか。
  602. K証人 本を読んでいました。
  603. 弁護人4 以上です。
  604. 神坂裁判長 では、検察官、どうぞ。
  605. 検察官1 検察官の方からお尋ねしますけれども、先ほど弁護人の方から図面を示されて、いろんな位置関係をお書きになっていましたよね。
  606. K証人 はい。
  607. 検察官1 あの図面の中に、座席の位置と、それからつり皮の位置がもとから書き入れてありましたね。
  608. K証人 はい。
  609. 検察官1 あなたが先ほどあの図面を書いたときというのは、どういう点を意識してその位置関係をお示しになったのですか。
  610. K証人 まずは自分の立ち位置が、座席でいうと、端から2番目の人が座るあたりの前に立っていたので、それを基準に、振り返った方のその角度によって、彼女の位置と、そこから彼女の頭越しに見えた男性の位置というふうに考えて書きました。
  611. 検察官1 最初に弁護人が図面を示したときに、つり皮の位置などについて、あなたの認識と合っているかどうかということを確認されましたよね。
  612. K証人 はい。
  613. 検察官1 そのときに、つり皮の位置というのは、もう少し外側というか、座席と座席を結ぶような感じであったように思うというふうにおっしゃいましたよね。
  614. K証人 はい。
  615. 検察官1 どっちが正しいかはともかくとして、あなたの認識というか、あなたの感覚でいうと、そんな感じなわけですか。
  616. K証人 はい、もうちょっと広いと思います。
  617. 検察官1 きょういろんな人の位置関係を書いてもらったんだけれども、そのときには、つり皮との位置関係というのは意識しながら書いているんでしょうか。
  618. K証人 いえ、それほど意識していません。自分からの位置と向き、それから、その後、移動したときの、移動した感覚みたいなもので書いています。
  619. 検察官1 それから、最初あなたがこの事件のことについて気づいたきっかけは、女子高生が「やめてください」という声を出したので、そちらの方を振り向いた、これがきっかけだったというふうに聞いてよろしいですか。
  620. K証人 はい。
  621. 検察官1 それで振り返ると、振り返ったときの位置関係については、先ほど図面に書いたりもしてもらいましたけれども、一番最初の図面、一番最初というか、書き入れてもらったものを示しますが、一番最初のは、あなたが振り返ったときは、女子高生が(ア)のところにいて、男が(イ)のところにいた、そういうことですね。
  622. K証人 はい。
  623. 検察官1 (イ)のところにいた男というのは、念のため確認しますが、被告人であった、そういうふうに聞いていいですね。
  624. K証人 はい。
  625. 検察官1 その後、この(イ)の人物が入れかわるとか、そういうことはあり得ないわけですね。
  626. K証人 あり得ません。
  627. 検察官1 あなたが振り返ったときに、被告人がやや身を引くような動作をしていたと思うということもおっしゃいましたよね。
  628. K証人 はい。
  629. 検察官1 それはもう少し詳しくいうと、どういうことなんですか。
  630. K証人 ちょっと身を引くような感じで、右手を軽く、「失礼」みたいな感じで、かざしていました。ただ、それが「やめてください」に反応したのか、その次の抗議に反応したのかは、ちょっと定かではありません。
  631. 検察官1 やや身を引くような感じというのは、最初に振り返ったときにあったのですか。
  632. K証人 そうですね。そのときにも、当然だと思いますが、声に対して体が引いて、反応していました。
  633. 検察官1 それは、体をのけぞらせるという感じなんですかね。
  634. K証人 それに近いと思います。
  635. 検察官1 あるいは例えば1〜2歩下がるとか、半歩下がるとか、そういうことをおっしゃっているんでしょうか。
  636. K証人 のけぞらせるような動きがまずあったと思います。あと、足の移動は、あって半歩か1歩ぐらいしか、動きようはなかったと思いますし、動いた印象もありませんでした。
  637. 検察官1 あなたが「やめてください」という声を聞いてから振り返るまで、振り返って(ア)や(イ)の位置に女子高生や被告人がいるのを確認するまでの間というのは、すぐなんですか、多少、間があるんですか。
  638. K証人 多少はあります。それほど大きな声でびっくりするようなことではなかったので、えっという感じで、1秒ぐらいはあいたかと思います。
  639. 検察官1 女子高生が「やめてください」といった瞬間に、被告人が移動したということも考えられるんでしょうか、考えられないんでしょうか。
  640. K証人 それはわかりません。
  641. 検察官1 あなたの書いた図面によると、一番最初にあなたが確認した女子高生と被告人の位置関係なんですけれども、女子高生の体の向きを基準とすると、被告人は女子高生の真後ろというよりは、やや右斜め後ろぐらいにいたという感覚になるんですか。
  642. K証人 女子高生は最初見たときに、振り返る動作を繰り返していたので、ちょっと向きというのが定かではないんですが、進行方向よりはやや左側、僕の方に向いていたように、要するに、こちら側にすごく顔が戻ってくる印象が強いので、ややですけれども、振り向いている動作だったんで、わかりづらかったんですが、たまたま被害者とその男性、被告人の背の高さの違いがあったので、僕の位置からいうと、3人が一応線上に並ぶようによく見えたという印象があります。
  643. 検察官1 この図面でいうと、(K)というのと(ア)というのと(イ)というのが直線上に並ぶようなイメージがあった、そういうことですか。
  644. K証人 はい。
  645. 検察官1 被告人は女子高生から抗議を受けましたよね。
  646. K証人 はい。
  647. 検察官1 それに対してどういう態度をとっていましたか。
  648. K証人 先ほどいった、一瞬ちょっと「あっ、失礼」みたいな感じの手の動作で、身を引いて、あとは知らぬぷりというか、大半は目をつぶっていた印象が強いんですが、抗議に対して特に何も反応を示さず、それで被害者がより悔しくて、感情が高ぶったんだと感じました。
  649. 検察官1 被告人は女子高生の抗議に対して余り反応してなかったということのようなんですけれども、なぜ被告人が余り反応していなかったのか。もちろんそれは被告人自身でなければわからないんだけれども、あなたにはどういうふうに見えましたか。
  650. K証人 はっきりと謝罪をしてしまうと、余りにも明らかに認める感じになるからか、何となくとぼけている感じには見えましたけれども。「謝ってください」という言葉にも特に謝罪するわけでもなかったので。
  651. 検察官1 一番最初にあなたが振り返ったときに、被告人はどういう動作をしたんですか。
  652. K証人 こういう感じです。
  653. 検察官1 右手を顔の前に上げるような動作ですか。
  654. K証人 はい。
  655. 検察官1 声は何か出していましたか。
  656. K証人 声は出してなかったと思います。
  657. 検察官1 そのときの動作はわかったのですが、被告人の表情、様子というのはどんなふうに見えましたか。
  658. K証人 そのときはちょっとひるんだというか、たじろいだ感じで、おっとという感じです。
  659. 検察官1 最初に被告人を見たとき、被告人はつり皮にはつかまっていなかったということですね。
  660. K証人 はい。
  661. 検察官1 その後、あなたは女子高生の近くまで行って、女子高生に、被害に遭ったこととか、警察などに突き出すかどうかを確認したりしましたよね。
  662. K証人 はい。
  663. 検察官1 それを確認した後、被告人に1歩ぐらい近づいて「突き出すからね」といった、そういうことでしたね。
  664. K証人 はい。
  665. 検察官1 それまでの間に被告人がつり皮につかまるということはあったんですか。
  666. K証人 それまではまだつかまってないと思います。
  667. 検察官1 あなたが被告人に「突き出すからね」というふうにいったとき、被告人のそれに対する反応、表情でもいいし、言葉でもいいんですけれども、反応はどういうものでしたか。
  668. K証人 かすかにうなずくような、納得したような様子ではありました。はっきりと示したわけではありませんが、特に抗議はしない、抵抗もしないという意思表示程度にかすかにうなずきました。
  669. 検察官1 文句をいってくるということはなかったんですね。
  670. K証人 ありませんでした。
  671. 検察官1 その後ですけれども、あなたが被告人に「突き出すからね」といった後、電車が蒲田駅に着くまでには、少し間があったんですよね。
  672. K証人 はい。
  673. 検察官1 その間に被告人はつり皮につかまったということになるんでしょうか。
  674. K証人 はい。ちょっと長く感じられた待っている時間の間に、ぶらさがるようにつかまって、目を閉じていた様子が印象に残っています。
  675. 検察官1 その間、あなたは、先ほど書いてもらった図によると、女子高生と被告人の間ぐらいに立っていたみたいなんだけれども、その間というのは、あなたは何をしていたんですか。
  676. K証人 女子高生が泣き続けているので、何となく慰めるような声をかけていました。
  677. 検察官1 被告人の言動とかには注意を払っていたんでしょうか。
  678. K証人 そうですね。時々は見ていましたし、もちろん視界に入る程度の角度ではあったので、いることはちゃんと把握はしていましたが、特に話しかけるとか、そういうことはしませんでした。
  679. 検察官1 あなたとしては「突き出すからね」といった時点で、次の蒲田駅で被告人をおろして、駅員さんなり、警察の人なりに引き渡そうと思っていたわけですか。
  680. K証人 はい。
  681. 検察官1 蒲田駅に着くまでの間に被告人が逃げてしまうとか、例えばほかの車両に移ってしまうとか、そういうことがあり得るんじゃないかということは考えませんでしたか。
  682. K証人 込みぐあいからして、そう簡単に移動できる感じではなかったのと、車内で移動したところで、すぐに追いかけることも可能だったので、心配していませんでした。
  683. 検察官1 あるいは被告人が逆上して暴れたりするんじゃないかとか、そういうことは考えませんでしたか。
  684. K証人 そういう心配もあるので、あえて刺激はせずに、おりるまでの間はほっておきました。
  685. 検察官1 あなたとしては、女子高生をフォローするような感じだったわけですか。
  686. K証人 はい。
  687. 検察官1 ただ、被告人の言動も目の中には入れてはいたんですか。
  688. K証人 はい。
  689. 検察官1 蒲田駅で電車からおりるまでの間に、被告人が、自分は何もやっていないとか、無実であるとか、あるいは人違いだとか、そういうようなことをいったということはありましたか。
  690. K証人 いえ、ありませんでした。
  691. 検察官1 一度もなかったですか。
  692. K証人 一度もありません。
  693. 検察官1 蒲田駅で電車をおりてからホーム上で、あるいは駅の乗務室に入ってからでもいいのですが、被告人が、自分は無実であるとか、何もやっていないとか、人違いであるとか、そういうことをいったということはありましたか。
  694. K証人 ありません。
  695. 検察官1 ちょっと話が戻るのですけれども、先ほど図面に緑色で書いてもらったところにちょっと注目してもらいたいんですが、女子高生の位置が緑色で(ア)と書かれて、あなたの位置が緑色でK4と書かれて、被告人の位置が緑色で(イ)と書かれていますね。
  696. K証人 はい。
  697. 検察官1 これはあなたが「突き出すからね」というふうに被告人にいった後、すぐこのような感じの並びになったという意味なんですか。
  698. K証人 被告人がつり皮のところに移動したのはいつころかわかりませんが、「突き出すからね」といってから比較的すぐ、彼女と被告人の間に体を入れる感じにして、彼女が向きを変えた、この状態になったと思います。
  699. 検察官1 被告人が赤の(イ)から緑の(イ)に移動したのと、被告人がつり皮につかまったのは、同じときなんでしょうか。
  700. K証人 それははっきりはわかりません。何となく電車の揺れとともに移動して、いつの間にか、つり皮につかまっていたという印象です。
  701. 検察官1 あなたは被告人がつり皮につかまっている場面も見ているわけですよね。
  702. K証人 はい。
  703. 検察官1 そのときの被告人の位置というのは、緑色の(イ)ということになるんでしょうか。
  704. K証人 そうです。この図のつり皮の位置を基準にすると、このつり皮にぶらさがるような感じでつかまっていました。
  705. 検察官1 それから、蒲田駅でホームにおりてからの話なんですけれども、被告人は女子高生と話をさせてくれという趣旨のことをいっていたのですか。
  706. K証人 はい。
  707. 検察官1 これはどういう意味だと思いましたか。
  708. K証人 僕は女子高生との会話を示談のきっかけにできる何かがあるのかと思いました。
  709. 検察官1 ただ、あなたは、少なくともあなたの判断としては被告人と女子高生と話をさせるべきではないというふうに判断したということなんですか。
  710. K証人 はい。
  711. 検察官1 それはどうしてなんですか。
  712. K証人 被告人がかなり大きな声で叫んでいたのと、そして激しく僕の拘束に抵抗する形で、後ろに戻る動作が激しかったのと、それを見て、女子高生もかなりおびえて、まだ泣き続けて、かなり距離をとって、ついてきている感じだったので、話せる状況ではないと判断しました。
  713. 検察官1 検察官からは以上です。
  714. 弁護人1 済みません、弁護人から。すぐ終わります。  先ほどあなたの説明では、女性の声であなたが振り向いて男性を見たときに、男性が酒に酔っていたような感じはなかったというふうに証言されましたか。
  715. K証人 はい。
  716. 検察官1 先ほどほとんどなかったとおっしゃったと思います。
  717. 弁護人1 ほとんどなかったということですか。
  718. K証人 特に酒云々について考えることはありませんでした。
  719. 弁護人1 蒲田警察署であなたが取り調べを受けて調書を作成したのは何回ありましたか。つまり、何通調書を警察でつくりましたか。
  720. K証人 警察で話をしたのは当日1回です。
  721. 弁護人1 その調書に、犯人の男は酒に酔った感じでしたというふうに記載があるのは覚えていますか。
  722. K証人 はい。
  723. 弁護人1 先ほどのあなたの説明とはちょっと食い違うと思うのですけれども、どうですか。
  724. K証人 振り向いた瞬間に酔っぱらいかどうかということは判断しませんでしたが、その後ずっと横にいましたので、酔った感じ。ただ、それ以上に事件のあれなんで、ちょっとその辺は正確ではありませんけれども、振り向いた瞬間に、あっ、酔っぱらいだと思ったりはしませんでした。
  725. 弁護人1 だけれども、駅事務室まで連れていった、そういう経験をして、その男性は酒に酔っていたというふうに警察に説明したんですか。
  726. K証人 そうですね。全体的な印象としては、しらふではないだろうと。
  727. 弁護人1 それから、女性の声であなたが振り向いたときに、女性が振り向いているときのその女性の目をあなたは見ることができましたか。
  728. K証人 いえ、見えません。
  729. 弁護人1 彼女がどちらを目で見ていたかというその視線自体、これは確認できませんでしたね。
  730. K証人 できません。
  731. 弁護人1 先ほどあなたが男性を見たときに、浮いたような感じをしたという表現をされているのですけれども、それは1人だけ酒に酔っていた感じがした、そういうことではないんですか。
  732. K証人 そういうことではありません。
  733. 弁護人1 それからもう1点、男性のネクタイをつかんだという説明なんですが、ネクタイのどの辺をつかんだんですか。
  734. K証人 ネクタイの真ん中辺を、細い方、太い方両方、同時につかみました。
  735. 弁護人1 首から垂れ下がっているネクタイ、これのちょうど真ん中あたりですか。
  736. K証人 そうですね。みぞおちあたりです。
  737. 弁護人1 太いのと細いのがありますけれども、これを一緒につかんだということですか。
  738. K証人 はい、締まらないように両方つかみました。
  739. 弁護人1 以上です。
  740. 検察官1 済みません、1点だけお聞きします。  今の弁護人からの質問にもあったのですけれども、あなたが振り返って女子高生と被告人の姿を見たときに、被告人が周囲の中で浮いているような感じがあったんですか。
  741. K証人 そうですね。
  742. 検察官1 それについてもう少し説明してもらいたいのですけれども、周囲の状況、あなたも含めても構いませんが、たくさんお客さん、乗客が乗っていたと思うのですけれども、そういう人たちはどんな様子、どんな態度をとっていたのでしょうか。
  743. K証人 ほかの乗客もすぐさま状況に気づいたわけではないと思うので、途中から、おいおいみんな気づき始めたんだと思うのですが、僕と同じで。これだけの人数の人が1カ所を遠慮なく見つめるというのを初めて見たということです。
  744. 検察官1 振り向いた瞬間はすぐわかったかどうかはともかくとして、女子高生が被告人に対して何度か抗議しますよね。当然そういうことになれば、あなたもそうだと思いますが、ほかの乗客の人たちも、何だろうと思って、女子高生や被告人の方に注目することになった、そういうことですか。
  745. K証人 はい。
  746. 検察官1 みんなが女子高生と被告人に注目している中、逆に被告人の方は注目されている側で、それで浮いているように見えた、そういう感じなんですかね。
  747. K証人 はい。
  748. 検察官1 終わります。
  749. 3弁護人 1点だけ「弁護人3」からお聞きしますが、先ほどの図面、緑色で書かれた部分がありますけれども、この図面上であなたが女子高生をなだめたりしているときには、被告人の視界に入らないように見えるのですけれども、そうではないですか。
  750. K証人 身動きしなければ入らないですけれども、電車が揺れていますし、別に片時も目が離れなかったとはいえないと思います。
  751. 大村裁判官 では、私の方からお尋ねします。  まず、電車の込みぐあいについてなんですけれども、今までの尋問でもさまざまに、押し合ったりするほどではないですとか、簡単に移動できないということなんですけれども、例えば人が素早く動く、移動するということはできるような状態だったんですか。
  752. K証人 いえ、僕の位置からでも、大体こういう場合、ドア側の方が込んでいると思うんですが、僕の立っていた、座った席の前の位置からでも、人をかき分ける感じでないと、女子高生の前まで移動できませんでした。
  753. 大村裁判官 先ほどあなたが検察官の質問に答えて、男の人が入れかわるのはあり得ないとお答えになったと思うのですけれども、それはあり得ないという理由は何ですか。
  754. K証人 そういう激しい移動をする動きは目撃しておりませんし、最初から一貫して女子高生が抗議している男性は変わりありませんし、なおかつ、そういうふうに簡単に動けるほどの隙間はありませんでした。
  755. 大村裁判官 次に、あなたが見たときに、確認ですが、女子高生は後ろを振り向いていたということなんですけれども、それは右肩の方なのか、左肩の方なのか、どちらですか。
  756. K証人 右肩からです。
  757. 大村裁判官 それから、先ほど足の移動があったとしても、半歩から1歩ということをおっしゃったかと思うのですけれども、あなたは足を実際に見ることはできたのですか。
  758. K証人 いえ、大体立っている人の胸より下は見えないぐらいの込みぐあいでした。
  759. 大村裁判官 あなたから見た上半身の動きから見て、足の移動がこうだろうというふうに思われたということですか。
  760. K証人 その程度です。
  761. 大村裁判官 それから、全体的にいって、被告人が酔っぱらっていた感じだったということなんですけれども、例えば顔色ですとか、お酒のにおいですとか、そういうものは何か感じられたことはありますか。
  762. K証人 顔色は状況が状況なんで、お酒のせいばかりかどうかわからなかったんですが、顔色は少し赤く、やや赤い。あとは待っている間つかまっているときに、やっぱりつり皮にぶらさがる感じの、ただ、電車内では暴れたりもしませんでしたし、別に僕に敵対的な言動をすることもなかったので、酔っぱらいというふうな認識はしませんでした。
  763. 大村裁判官 先ほどホームにおりてから、後ろに戻ろうとする行動をとったということなんですけれども、それは要するに、逃げようとしたということですか。
  764. K証人 いえ、後ろからついてきている女子高生と話がしたいということを主張していたので、彼女の前に行こうとしているんだと思いました。
  765. 大村裁判官 あなたは電車をおりるときには被告人のネクタイを持っていたということなんですけれども、これはいつまでということですか。
  766. K証人 事務室まで。
  767. 宮本裁判官 あなたが女子高生の声を聞いて振り向いたときですけれども、被害者と被告人の間は、先ほど証言台の細い長さですか、それは51センチらしいですが、それぐらいか、それより短いぐらいと聞きましたよね。
  768. K証人 はい。
  769. 宮本裁判官 そこに人が入るスペースというのはあるのですか。
  770. K証人 ないと思います。
  771. 宮本裁判官 被告人と被害者の間にもう1人だれか入ることは可能な広さなんですか。
  772. K証人 いえ、押しのけない限りはあり得ないと思います。
  773. 宮本裁判官 押しのけない限りは人は入れない。
  774. K証人 はい。
  775. 宮本裁判官 あなたは被告人を現行犯逮捕したわけですね。
  776. K証人 はい。
  777. 宮本裁判官 この根拠というのは、まず被害者が抗議していた相手が被告人だったからということが一番大きいんですかね。
  778. K証人 はい。
  779. 宮本裁判官 あとは、被害者とあなたが話して、「さわられたの?」と聞いて「はい」といったからということですか。
  780. K証人 はい。
  781. 宮本裁判官 あと、位置関係というのもあるのですか、被告人が犯人だと考えたのは。
  782. K証人 それはほかにそれらしき人がいませんでしたし、絶好の立ち位置に立っていたとは思います。
  783. 宮本裁判官 今、弁護人の方は、真犯人がいて、その人がさっと動いて、被告人が間違えられて捕まえられたという主張をしているのですけれども、そういう怪しい真犯人らしき人を見たということはないですか。
  784. K証人 見ていません。
  785. 宮本裁判官 被告人とか被害者の近くに怪しい動きをしていた人はいなかったですか。
  786. K証人 いませんでした。
  787. 宮本裁判官 あと被告人が、僕はやってないとか、そういう痴漢の犯人であることを否定するような発言はなかったですか。
  788. K証人 ありませんでした。
  789. 宮本裁判官 あなたは、弁護人2の事情聴取に応じたんですか。面談しませんでしたか。
  790. K証人 しました。
  791. 宮本裁判官 これはどういう経緯なんですか。
  792. K証人 経緯ですか。
  793. 宮本裁判官 連絡があったとか。
  794. K証人 突然自宅に訪ねてこられましたので、話ぐらいはと思って、近所のマクドナルドで話しました。
  795. 宮本裁判官 きょういったようなことをいったわけですか。
  796. K証人 そうですね。調書をダーッと飛ばし読みしながら、雑談風に話しました。
  797. 宮本裁判官 これは不同意で出てないけれども、請求書の立証趣旨見ると、逮捕者というのはあなたですが、「逮捕者は、被害者が振り返ったときに、被告人は被害者の右斜め後ろにいて、1〜2歩後退することもなく、近くのつり皮につかまってうつむいたと述べている」と書いてあるのですけれども、近くのつり皮につかまってないといっていましたよね。
  798. K証人 はい。
  799. 宮本裁判官 これは弁護人が勝手にうそを書いたということなんですか。
  800. K証人 いや、順番というか、時間的に飛んでいるだけだと思いますけれども。
  801. 宮本裁判官 ああ、その後つかまったということ。
  802. K証人 そうですね。別に警察や検事さんと話したみたいに、順番にじっくり時間の経過とともに質問されたわけではないので。
  803. 宮本裁判官 振り返ったときはつかまってなかったというのは間違いないですか。
  804. K証人 間違いないです。
  805. 宮本裁判官 あと、あなたは警察で1回取り調べを受けたのですか。
  806. K証人 はい。
  807. 宮本裁判官 検察庁ではないんですか。
  808. K証人 検察庁も1度行きました。
  809. 宮本裁判官 じゃ、警察官調書と検察官調書と、調書は1通ずつあるのですか。
  810. K証人 そうなると思います。
  811. 宮本裁判官 そこでいっている内容と、きょういった内容で、異なっているところはありますか。
  812. K証人 ないと思います。
  813. 宮本裁判官 あなたはきょうの証言が記憶どおりなんでしょうけれども、警察とか検察庁で、今思えばちょっと違った、記憶違いのことをいったというところはないですか。
  814. K証人 記憶にはありません。
  815. 宮本裁判官 あと、あなたは、自分が捕まえたのが植草教授だというのはいつわかったのですか。
  816. K証人 翌日出社してインターネットのニュースサイトを見た瞬間。
  817. 宮本裁判官 じゃ、あなたがネクタイつかんで連れていくとか……。有名なというか、植草教授という存在を知っていたのですか。
  818. K証人 手鏡の事件という事件そのものしか知りませんでした。
  819. 宮本裁判官 じゃ、顔とか知らなかったのですか。
  820. K証人 顔も知らないです。
  821. 宮本裁判官 じゃ、普通のサラリーマンかなんかだと思っていたわけですか。
  822. K証人 サラリーマンとはちょっと雰囲気が違うなと思いましたけれども。正確にいうと、上着の内側の刺繍で、お名前はわかったんですが、それがどういう人物とかいうのは知りませんでした。
  823. 宮本裁判官 上着の字が見えたのですか。
  824. K証人 はい。
  825. 宮本裁判官 いつですか。
  826. K証人 電車が着くのを待っている間か、おりる直前にネクタイをつかもうとする動作のときか、ローマ字の字体で「Uekusa」と書いているのが見えまして、ああ、そういう名前の人なのかと。
  827. 宮本裁判官 思ったわけですか。
  828. K証人 はい。
  829. 弁護人1 今、裁判官の質問で、被告人以外に怪しい人はいなかったのかという質問に、いなかったというお答えをしましたけれども、女性が被告人の方に向いていたところから、あなたはその男性を見ているわけですよね。
  830. K証人 はい。
  831. 弁護人1 そのときに周りの人を見回したことがあるのですか。
  832. K証人 そのときといいますと。
  833. 弁護人1 振り向いてからですね。
  834. K証人 先ほどいったように、全員が注視している状況を、壮観だなと思って見ていましたので。
  835. 弁護人1 あなたとして、じゃ、だれが犯人なのかなというふうな目で周りを見たことがあったのですか。
  836. K証人 いえ、探す必要はありませんでした。
  837. 弁護人1 もうすぐに被告人がその人間だと、振り向いた時点であなたはそう思ったんでしょう。
  838. K証人 はい。
  839. 神坂裁判長 どうも。終わりました。どうも長時間ご苦労さまでした。  図面に記載していただいた書面に署名をしていただけますか。
  840. K証人 はい。
  841. 神坂裁判長 1枚目の図面も、進行方向を特に意識しておられなかったという証言の関係で、添付した方がいいと思いますので。
  842. 弁護人2 そうですね。私もそう思います。
  843. 神坂裁判長 その1からその3という形で全部署名していただけますか。
  844. K証人 はい。
  845. 神坂裁判長 進行方向というのは弁護人が記載されたんですよね。
  846. 弁護人2 はい。
  847. 神坂裁判長 そこに書いておいてもらえますか。弁護人の記載。
  848. 弁護人2 はい。
  849.      

    〔証人により署名〕

  850. 神坂裁判長 それでは、結構ですので。どうもご苦労さまでした。
  851.      

    〔K証人、退廷〕

  852. 神坂裁判長 それでは、午後から再開いたします。  一たん休憩して午後から再開いたしますけれども、同意いただいたDVDの再生というのはどのぐらいかかるのですか。
  853. 弁護人1 実質は合わせても30秒かからないぐらいです。ただ、非常に短い間に数秒単位ぐらいで入っていますので、できればスローで見ていただければなとは思っています。
  854. 弁護人2 スロービデオで再生しないと、パッと見落としてしまうような感じです。
  855. 神坂裁判長 はい。  では、何回か再生するにしても、それほど時間がかからないようですので、予定どおり1時半から再開することにいたします。  では、検察官、恐縮ですけれども、ご指摘のありました撮影報告書その2について、不同意とされている部分について、同意が可能かどうか、検討していただけますでしょうか。
  856. 検察官1 はい。
  857. 神坂裁判長 それでは、午前中はこれで終わります。
  858. 〔休   廷〕

 
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